旧来の中国ロケットが直撃を受けた批判の一つに、有毒な非対称ジメチルヒドラジンと四酸化二窒素の使用があった。内陸部の落下地点における安全確保や除染作業は、コストと運用の両面で大きな課題であった。これに対し、長征7号Aが全面的に採用するYF-100エンジン(液酸ケロシン)は、燃焼生成物が極めてクリーンであり、地上作業員の安全性を劇的に向上させた。
推進剤コストの低減効果も見逃せない。ケロシンは常温保存が可能で扱いやすく、液体水素・液体酸素に比べて取り扱いコストが圧倒的に安い。第1段とブースターでケロシンを燃やし尽くし、真空中の高効率が必要な最終段階でのみ液体水素を用いるという二段階のロジックは、極めて高い費用対効果を生み出している。宇宙輸送の経済性が問われる現代において、この低コスト構造は中国の宇宙産業における最大の武器となっている。