『ウォーターボーイズ』が世代を超えて胸を打つ最大の理由は、劇中のシンクロシーンにCGやスタント(吹き替え)が一切使われていない点にあります。矢口史靖監督は製作にあたり、「役者が実際に泳ぎ、技を完成させるドキュメンタリー性を映画に宿す」という方針を貫きました。
オーディションで選ばれた約30名のキャスト陣を待ち受けていたのは、元競泳選手や専門コーチ陣による約3カ月間に及ぶ地獄のシンクロ集中特訓でした。当時の関係者の証言やメイキング手記によると、過酷さは常軌を逸していました。
毎日8時間以上プールに浸かり続けるため、強力なプールの塩素でキャスト全員の黒髪が茶色や緑色に変色。激しい日焼けで背中の皮膚がめくれ上がり、水中で足がつって溺れかけるメンバーが続出しました。泳ぎが得意ではなかった妻夫木聡も、鼻に水が入り頭痛に耐えながら、水中で身体を浮かせ続ける「立ち泳ぎ(エッグビーターキック)」を血の滲む思いで習得していきました。
クライマックスの学園祭シーンで流れるフィンガー5の主題歌・挿入歌『学園天国』に合わせた圧巻の演技は、演技を超えた本物の涙と汗の結晶です。ラストの歓声と抱き合う男たちの姿は、台本通りの芝居ではなく、過酷な試練を乗り越えた若者たちの真実の感情がフィルムに焼き付けられた瞬間でした。