ネット上の簡易なあらすじや一部のまとめでは、「最初は先輩が好きだったヒロインが、途中で当て馬だった同級生に乗り換えた作品」と表層的に解釈されることがあります。しかし、これは本作の本質を見誤った大きな誤解です。
ひろちひろ先生が描いたのは、誰かを踏み台にするような安易な乗り換え劇ではありません。本作の根底にあるのは「人が誰かを好きになる理由の純粋な探求」です。タイトルの『ふたりで恋する理由』が示す通り、恋とは一人で憧れを募らせる(片想いの完結)ものではなく、ふたりで感情を交わし、傷つき、互いの存在によって自己を変革していくプロセスそのものを指しています。
愛慈先輩は決して都合のいい当て馬として消費されたのではなく、うららにとって「恋の喜びと切なさを教えてくれたかけがえのない恩人」として最後まで敬意を持って描かれています。愛慈先輩自身も、うららと美園くんの真っ直ぐな想いに触れることで自らの過去と向き合い、前に進む力を得ました。誰も悪者にしない丁寧な心理描写こそが、マーガレットコミックス屈指の評価を誇る所以です。