東ゴルトー共和国の宮殿中央大階段において、討伐隊の前に立ちはだかったユピーは、まさに「動かざる鉄壁」でした。突入直後、シュート=マクマホンの命を賭した時間稼ぎ、モラウ=マッカーナーシの煙による視界制限、そしてナックル=バインのハコワレ付加とメレオロンの「神の不在証明(かみのアブセント)」を組み合わせた奇襲に晒されます。
当初、ユピーにとって討伐隊のハンターたちは「羽虫のように鬱陶しい存在」に過ぎませんでした。感情のままに怒り狂い、その怒りに身を任せて暴虐の限りを尽くしていたユピーですが、片足を失いながらも誇りを胸に立ち向かうシュートの気迫や、仲間を救うために不可視の隠密状態を解除して姿を現したナックルの覚悟を目の当たりにし、その内面に決定的な亀裂と変化が走ります。
激怒の果てに自らを爆発させた直後、ユピーは怒りを完全にコントロールする境地に到達。「オレは今…凄まじく冷静」と自認した瞬間、感情に振り回される野獣から、戦局を冷徹に俯瞰する真の強者へと変貌を遂げました。
さらに、窮地に陥ったモラウを人質に取られた状況で、ナックルがモラウの命を救うためにハコワレの能力を解除(ポットクリンの消滅)する取引を持ちかけた場面。ユピーは自身の圧倒的な優位性を理解していながら、命懸けの友情と信念を見せたナックルたちに対し、次のような歴史に残る名言を遺して戦場を立ち去りました。
「くだらねェ…そんな事で死に急ぐな。オレは約束は守る。貴様らの命は取らん」
かつて敵を虫けら同然に踏み潰していた魔獣が、敵対する人間を「敬意を払うべき相手」として認め、自らの美学に基づいて慈悲を与えたこのシーンは、キメラアント編における「個の獲得と尊厳」を象徴する屈指の名場面です。