フルートの楽譜に現れる「tr」や波線(〜〜)で示されるトリル記号は、指示された主音とその2度上の音を素早く交互に往復させる装飾音です。調号や臨時記号によって、半音上(短2度)か全音上(長2度)かが決まります。バロック音楽では上から開始するケースもありますが、近代以降の楽曲では主音からスタートするのが原則です。
スムーズな演奏に欠かせないのが、フルート本体の右手人差し指〜中指付近に配置されている2つの小さな細長いキー(トリルキー)です。これらは通常のスケール演奏ではほとんど使われませんが、トリルを瞬時に成立させるために設計された極めて重要な機構です。
特に主管上部に位置するC-Dトリルキー(第1トリルキー)およびC#-D#トリルキー(第2トリルキー)は、押さえるだけで特定の音程を半音〜全音跳ね上げる役割を持っています。これらを適切に操作することで、複雑な指の交差運動を避け、指1本だけのトリル動作に変換することが可能になります。