引退後の力士を待ち受ける最大の試練、それが「年寄名跡」の取得問題だ。日本相撲協会に親方(指導者)として残るためには、定員105名分しか存在しない株(名跡)を所有するか、または借用しなければならない。しかし、この株の取得には数億円規模とも言われる莫大な資金が動くケースもあり、現役時代に優れた実績を残した力士であっても容易には手に入らないのが実情である。
協会関係者は密かに明かす。「どれほど強かった横綱でも、年寄名跡を準備できなければ協会に残ることはできません。歴史的名横綱として一時代を築いた白鵬翔の引退時にも、名跡取得や部屋の継承を巡って様々な調整や議論が行われました。現役時代の功績と、引退後の協会内でのポスト確保は必ずしも直結しないのです」。この構造的な問題により、実績ある名力士が協会を去り、相撲界とは全く異なる業界へ転身せざるを得ないケースも少なくない。