登坂の現役時代を振り返る際、決して避けて通れないのが度重なる大怪我との闘いだ。リオ五輪での栄光以降、彼女の身体は絶え間ない悲鳴を上げ続けていた。足首の手術、長期にわたるリハビリ、そして復帰への焦燥感。世界トップに立った者にしか分からない葛藤と絶望の淵を、彼女は何度も行き来した。
しかし、その過酷な時間は無駄ではなかった。思い通りに動かない身体と向き合い続けた経験が、彼女の精神的な深みを一気に増させたのだ。「うまくいかない時期こそ、人間としての引き出しを増やしてくれる」。そう振り返る彼女の言葉は、スポーツの枠を超えて、日々の仕事や人生の壁にぶつかる多くの人々の胸に深く響いている。