NPBの歴史を振り返ると、盗塁死の歴代データには野球ファンの直感を裏切る驚くべき記録が存在します。通算最多盗塁死のプロ野球記録を保持しているのは、世界の盗塁王として名高い福本豊氏の299盗塁死です。福本氏は通算1065盗塁という前人未到の金字塔を打ち立てており、盗塁企図数自体が1364回と圧倒的であるため、失敗数も比例して膨らみました。驚異的なのはその成功率で、通算78.1%というハイアベレージを維持し続けています。
一方で、球界の語り草となっているのが野村克也氏の185盗塁死という記録です。捕手として長年活躍し、決して俊足とは言えなかった野村氏ですが、通算117盗塁に対して185盗塁死を喫しており、「通算盗塁数よりも通算盗塁死の数が大幅に上回っている選手」として歴代最多記録を残しています。この不可解な数字の背景には、当時の南海ホークスが多用した緻密な戦術がありました。
野村氏の盗塁死の大半は、単独スチールではなくヒットエンドランのサインが出たプレーによるものです。打者が空振りや見逃しをしてしまい、走らざるを得なかった野村氏が二塁手前で無情にも刺されるシーンが積み重なった結果、この異色の大記録が誕生しました。まさにチーム戦術を背負い続けたレジェンドの勲章とも呼べる数字です。