川で元気いっぱいにハサミを振り上げていたサワガニが、自宅に持ち帰った途端に弱ってしまう現象には、明確な生物学的要因が存在します。初心者が無意識にやってしまいがちな「命取りになるミス」は主に3つあります。
第1の落とし穴は、「魚のように深い水の中で飼育し、溺死させてしまうこと」です。サワガニはエラ呼吸を行いますが、体内に水分を蓄えつつ空気中からも酸素を取り込む半陸生の生態を持っています。水深が数センチ以上あり、水面に上がれる足場や陸地がない環境に閉じ込められると、水中の溶存酸素が不足した際に窒息して溺れ死んでしまいます。
第2の落とし穴は、「水温ショックとカルキ(残留塩素)によるエラへのダメージ」です。サワガニが生息する山間の渓流は夏場でも水温が15℃〜20℃前後に保たれています。それをエアコンの効いていない真夏の室内(28℃〜30℃超)に置いたり、水道水をカルキ抜きせずにそのまま注いだりすると、エラ組織が破壊されて致命傷となります。
第3の落とし穴が、「持ち帰り段階での酸欠と過密ストレス」です。川で捕獲した際、密閉したバケツに少量のぬるくなった水を入れて運ぶと、持ち帰る道中で急速に酸素が欠乏します。持ち帰る際は、水を張るのではなく、湿らせた水苔や落ち葉、濡らしたキッチンペーパーを敷いた通気性のある虫かごに入れるのが鉄則です。