2018年12月31日、第69回NHK紅白歌合戦において、米津玄師の出場発表は放送直前の12月26日という異例のタイミングで行われました。当時、TBS系ドラマ『アンナチュラル』の主題歌として社会現象を巻き起こしていた『Lemon』は、誰もが待ち望みながらも「本人のテレビ生出演はまずあり得ない」と見られていた楽曲です。
テレビ出演を原則として固辞していた彼がオファーを承諾した最大の理由は、「楽曲が生まれた背景である亡き祖父への想い」と「故郷である徳島からの生中継」という条件の一致にありました。『Lemon』は制作期間中に他界した祖父へのレクイエムとして紡がれた作品であり、米津自身も公式コメントで「祖父が生きて暮らした故郷で歌うことに大きな意味があると感じた」と心情を吐露しています。
NHK側はNHKホールへの来場を求める通例を崩し、徳島県鳴門市に位置する大塚国際美術館(システィーナ・ホール)からの完全生中継を承諾しました。数百本に及ぶキャンドルの炎が揺らめく厳かな空間で、ダンサー・菅原小春氏の身体表現とともに放たれた圧倒的なパフォーマンスは、単なる歌番組の枠組みを完全に超越した総合芸術として日本中に衝撃を与えました。