バッグの持ち手が劣化する背景には、素材の化学的特性と日常的な使用による物理的負荷が複合的に絡んでいる。ここを理解しておかないと、補修してもすぐに再発する。
合皮の「加水分解」——避けて通れない化学反応
合成皮革(合皮)の表面がベタついたり、ボロボロと剥がれたりする現象の正体は「加水分解」だ。合皮の主成分であるポリウレタン樹脂が、空気中の水分と長期間反応することで分子構造が切断され、素材そのものが崩壊していく。これは使用頻度に関係なく進行するため、「買ってから一度も使っていないバッグの持ち手が、クローゼットから出したら粉々になっていた」という報告も実際に多数寄せられている。編集部が確認した修理専門店への相談事例でも、保管状態の良い未使用品の持ち手が5年程度で剥がれ始めるケースは珍しくないという。
革素材の乾燥と「コバ剥がれ」
本革の場合、合皮のような急激な加水分解は起きにくいものの、乾燥による繊維の硬化や、持ち手の縁部分(コバ)に施された塗装の剥がれが典型的な劣化サインとなる。特に汗や皮脂が付着しやすい握り部分は、表面のコーティングが摩耗しやすく、そこから水分が浸透して内部の革を劣化させる。定期的な保湿ケアを怠ると、表面は無傷でも内部の繊維が脆くなり、突然の断裂を引き起こすこともある。
縫製部への応力集中——重い荷物が引き起こす「持ち手切れ」
持ち手が切れる事故の多くは、持ち手とバッグ本体を接続する付け根部分で発生する。トートバッグやビジネスバッグにPCや書類を詰め込みすぎると、持ち手の縫製部に常時大きな引張応力がかかる。縫い糸が徐々に緩み、最終的に革や合皮自体が引きちぎれるというメカニズムだ。修理業者への取材によると、持ち手切れ修理の7割以上は付け根部分の断裂で、中央部での切断は経年劣化よりも外的要因(鋭利なものへの接触など)によるケースが目立つという。