野球界で一般的に「ストレート」と呼ばれる球種は、正式にはフォーシーム(フォーシーム・ファストボール)を指す。ボールが1回転する間に縫い目(シーム)が4本、空気抵抗を受ける構造になっており、強いバックスピン(きれいな上向きの回転)が生み出す上向きの力――いわゆる「マグヌス効果」によって、重力に逆らってボールが浮き上がるような錯覚を打者に与える。
これに対し、ツーシームとはボールが1回転する際に縫い目が2本しか通過しない軌道を描く速球のことだ。球速自体はフォーシームとほぼ変わらないか、わずか2〜3km/h程度落ちる程度にとどまる。しかし、指先から放たれた瞬間のスピン軸の傾きと、縫い目が空気を不均等に切り裂く現象によって、フォーシーム特有の「ホップ成分(上方向への揚力)」が意図的に打ち消される。その結果として生まれるのが、手元で曲がる動く速球の正体だ。
右投手の場合、ボールは右打者の内角(投手の利き腕方向)へと鋭く食い込みながら、重力に従ってスッと数センチから十数センチ沈み込む。打者からすれば「真ん中高めの絶好球が来た」と踏み込んでスイングした瞬間に、ボールが視界から消えるような感覚に陥る。このわずかな落差こそが、ツーシームが打者にとって悪夢と呼ばれるゆえんである。