長年、視聴者やメディアの間で「B'zはなぜNHK紅白歌合戦に出場しないのか?」という疑問は尽きることがありませんでした。一部の週刊誌では「NHKとの確執」や「巨額のギャラ問題」といった根拠のない憶測が飛び交った時期もありましたが、音楽業界関係者の取材から浮かび上がるB'z紅白辞退の真相は、極めてストイックな表現者としての論理に基づいています。
B'z紅白出ない理由として挙げられる決定的な要因は、主に以下の3点に集約されます。
第1に、B'z年末年始スケジュールの鉄則です。B'zは毎年、夏から秋にかけての大規模なスタジアム・アリーナツアー「LIVE-GYM」を完遂させた後、年末年始は翌年に向けたスタジオワークや楽曲制作期間、あるいは疲弊した身体をリセットするための完全休養期間として厳格にスケジュールを組んできました。1年を通じてコンディションを維持し、数万人を収容するライブで完璧なボーカルとギターを届けるため、年末の単発イベントに照準を合わせることが構造上困難だったという実情があります。
第2に、「生演奏の音響クオリティ」に対する一切の妥協なき姿勢です。大人数のアーティストが秒単位で入れ替わる紅白の生放送では、バンド特有の重厚なアンサンブルや、松本孝弘のギターアンプが放つ空気の振動、稲葉浩志の強靭なハイトーンボイスを完璧なバランスでPA(音響)処理することが極めて困難でした。「自分たちが納得できる音をファンに届けられないのであれば、出演する意味がない」という徹底した職人気質が、オファー辞退の大きな防壁となっていました。
第3に、音楽番組特有の演出に対する距離感です。かつての紅白歌合戦に見られたような、寸劇への参加や応援合戦、ひな壇への着席といった番組構成は、純粋に「音とライブ」だけでリスナーと対峙してきたB'zのパブリックイメージとは相容れないものでした。自分たちの音楽的アイデンティティを保てない環境には身を置かないという、極めて健全なポリシーが貫かれていたのです。