では、腕周りが実際にサイズアップしてしまう背景にはどのような要因があるのでしょうか。腕が太くなる決定的な理由は、単なるカロリーオーバーだけでは説明がつきません。解剖生理学的な見地から、3つの主要なファクターが特定されています。
第1に、上腕三頭筋(腕の裏側の筋肉)の慢性的な不活動です。物を引く・持ち上げる動作では力こぶ側の上腕二頭筋が使われますが、裏側の上腕三頭筋は「肘を後ろに強く伸ばす」動作を行わない限り日常生活ではほとんど稼働しません。使われない筋肉は血流が滞り、代謝が低下して脂肪と水分を溜め込みやすくなります。
第2に、巻き肩・猫背に伴うリンパ液と静脈血の滞留です。デスクワークで肩甲骨が外側に開き、肩関節が内旋すると、鎖骨下リンパ節や腋窩(わきの下)リンパ節が圧迫されます。これにより、腕から心臓へと戻る体液循環が阻害され、慢性的な「むくみ」が定着して線維化(セルライト化)を促してしまいます。
ネット上で流布している腕の太さ噂の真相についても触れておかなければなりません。「筋トレをすると腕が太くなってしまうのでは」という懸念が女性の間で根強く囁かれていますが、これは明確な誤解です。女性はテストステロン(筋肉同化ホルモン)の分泌量が男性の10分の1から20分の1程度しかなく、自重や軽いダンベル負荷による運動で腕が丸太のように太くなることは生理学的にあり得ません。むしろ、適度な負荷を与えることで筋線維の密度が高まり、引き締め効果(トーニング効果)が発揮されます。