フィギュアスケートにおいて、スピードは命だ。坂本花織の演技が他の選手と一線を画す最大の理由は、助走に入った瞬間の初速の速さにある。多くの選手が細かなエッジワークで段階的に加速するのに対し、彼女はわずか数回のストロークでリンクの端から端まで到達する。
この爆発的な推進力を生み出しているのが、大腿四頭筋とハムストリングスの緻密な連動だ。深く沈み込んで氷を力強く押し出す動作は、短距離陸上選手にも匹敵する。氷の抵抗をねじ伏せ、余すことなく前進エネルギーへと変換する技術は、まさに長年かけて磨き上げた足腰の筋力があるからこそ実現できる。