歌手として頂点を極めた水前寺清子は、テレビドラマの世界でも空前絶後の記録を打ち立てた。名プロデューサー・石井ふく子に見出され、TBSテレビ系で1970年から放送された『ありがとう』シリーズの主演に抜擢されたのである。
婦人警官や看護師、魚屋の娘など、庶民的で芯の強いヒロインを等身大で演じ切った彼女の姿は、日本中の視聴者を虜にした。共演した山岡久乃との軽妙かつ愛情あふれる母娘の掛け合いは社会現象となり、第2シリーズ(看護師編)では民放ドラマ史上最高となる視聴率56.3%を記録。この驚異的な数字は、現在に至るまで誰にも破られていない金字塔である。
当時の撮影現場について水前寺は、歌とドラマ撮影の過密スケジュールで睡眠時間はわずか数時間だったと振り返る。それでも弱音を一切吐かず、現場を明るい笑顔で引っ張り続けたプロ意識が、伝説のドラマを成功へと導いた。