初代が舞台を去った昭和中期、小川家の兄弟たちは映画界へ本格進出し、日本映画史に不滅の足跡を刻んでいく。その中心にいたのが、初代の実弟である萬屋錦之介だった。錦之介は東映時代劇の絶対的エースとして君臨し、『宮本武蔵』や『一心太助』など、映画史に残る傑作群で日本中を熱狂させた。
歌舞伎の洗練された所作と、大衆を惹きつける映画的リアリズムの融合。萬屋一門が成し遂げたこの革新は、伝統の枠組みにとどまらない表現のダイナミズムを世に知らしめた。初代中村獅童は、そうした兄弟たちの華々しい活躍を間近で見守り、時に制作の現場から支え続けたと言われている。
時代劇が映画からテレビへと移行する激動のなかでも、萬屋の役者たちは常に変革の先頭にいた。舞台という閉じた空間から飛び出し、映像メディアという大海原で観客と対峙する姿勢は、初代から二代目へと受け継がれる「萬屋の血脈」の根幹を形作っていったのである。