かつて忌避される一方だった事故物件に対する世間の視線は、ここ数年で劇的な変容を遂げた。その先駆けとなったのが、「事故物件住みます芸人」として知られる松原タニシ氏の存在だ。自身の体験を綴った著書『事故物件 恐い間取り』のヒットと映画化を機に、タブー視されていた空間は一種のコンテンツとして消費され始めた。
YouTubeをはじめ、NetflixやABEMAといった動画配信プラットフォームでは、オカルト・ホラーの文脈だけでなく、家賃の安さに着目したリアリティショーやドキュメンタリーが日常的に配信されている。若年層の間では「家賃が相場より大幅に安ければ、心理的瑕疵など気にしない」と合理的に割り切る層も確実に増えた。
恐怖の対象から合理的な選択肢、あるいはエンターテインメントの舞台へ。メディアの露出過多によって消費者の感覚が麻痺する懸念はあるものの、事故物件という存在が日常の会話に上るようになったことで、かえって過剰なスティグマ(差別や偏見)が薄れつつある側面も見逃せない。