クッパがピーチ姫を連れ去る理由は、シリーズの歴史の中で大きく変化してきました。記念すべき第1作『スーパーマリオブラザーズ』(1985年)の取扱説明書に記された公式設定によると、当初の動機は極めて政治的・軍事的なものでした。キノコ王国を侵略した大魔王クッパは、キノコ族をブロックや岩に変える黒魔法を使用。その「クッパの魔法を解く力を持つ唯一の存在」がキノコ王国の王女・ピーチ姫だったため、魔法を破られないよう彼女を幽閉したのが最初の誘拐理由です。
しかし、シリーズが重なるにつれてクッパの動機は「国家侵略の手段」から「ピーチ個人への好意」へとシフトしていきます。特に2000年代以降の作品では、クッパのピーチに対する恋心が明確に描かれるようになりました。映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』で見せたピアノ弾き語り曲「Peaches」の熱唱や強引な結婚式のセッティングは、クッパの本気度と不器用な純情さを象徴する場面です。世界征服を企む冷酷な大魔王でありながら、一途にピーチを想い続けるロマンチストという二面性こそが、クッパというキャラクターが長年愛される最大の魅力になっています。