「注射なしで痛くない」というフレーズでSNSや口コミを中心に爆発的な関心を集めた点鼻インフルエンザワクチンだが、その正体は第一三共が国内で製造販売を手がける「フルミスト点鼻液」である。欧米では2003年の米国承認以来、20年以上の豊富な臨床実績を持つワクチンであり、日本国内でも承認取得を経て本格的な供給体制が確立された。
最大の特徴は、針を皮膚に刺す皮下注射とは異なり、鼻腔内に薬液を霧状に吹き付ける点にある。投与は左右の鼻の穴に各0.1mL、合計0.2mLをスプレーするだけで、処置自体は数十秒で完了する。注射特有のチクッとした痛みや筋肉の重だるい痛みが生じないため、針に対する激しい恐怖心(注射恐怖症)を抱える小児や、接種のたびに大立ち回りを演じていた家庭にとっては救世主とも呼べる存在となっている。
知っておくべき基本仕様として、フルミストの対象年齢は「2歳以上19歳未満(2歳〜18歳)」に限定されている点が挙げられる。2歳未満の乳幼児は喘鳴(ぜんめい:気管がゼーゼーと鳴る症状)の誘発リスクが懸念されるため対象外であり、19歳以上の成人に関しても国内の臨床試験データに基づき適応外とされている。また、フルミストの接種回数は原則として年1回で完結する。従来の皮下注射型ワクチンでは13歳未満の子どもは2〜4週間の間隔を空けて2回接種する必要があったが、点鼻ワクチンであれば1回の来院で済むため、保護者の通院負担を大幅に削減できる点も見逃せない事実だ。