ネット上の育児情報には、善意から発信されながらも医学的には誤謬を含んでいるものが散見されます。その代表例が「昼間にたくさん起こしておけば、夜ぐっすり眠る」という俗説です。
大人の感覚では「疲れさせれば眠くなる」と考えがちですが、生後1ヶ月の新生児においてこれは完全に逆効果となります。赤ちゃんの体力と神経系は極めて脆弱であり、連続覚醒可能時間はわずか40分から1時間程度しかありません。この時間を超えて刺激に晒され続けると、赤ちゃんの体内ではストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンが過剰に分泌され、「疲れすぎ(オーバートワイアード)状態」に陥ります。覚醒ホルモンが脳を覚醒させ続けるため、どれほど眠くても自力で入眠できず、狂乱状態で激しく泣き続けるという負の連鎖が発生するのです。
では、生後1ヶ月時点で赤ちゃんの昼夜逆転を直す方法として、何が有効なのでしょうか。この月齢では脳下垂体からのメラトニン分泌機能が完成していません。したがって、完全な夜間睡眠を期待するのではなく、赤ちゃんの体内時計の土台を「物理的な光環境」によって外側から整えるアプローチをとる必要があります。
具体的には、朝7時前後にはレースのカーテンを開けて自然光を部屋に取り込み、生活音を自然に響かせます。逆に夜19時以降は部屋の照明を暖色系の間接照明に切り替え、照度を50ルクス以下まで落とします。夜間の授乳やオムツ替えの際も決して天井の主照明は点けず、手元を照らすフットライトのみで無言で対応する。この「明暗のメリハリ」を毎日積み重ねることで、生後2〜3ヶ月頃から本格化するサーカディアンリズムの獲得が極めてスムーズになります。