「ナチュラルクリーニング」という耳触りの良い言葉とともに、重曹を使った洗浄が推奨されることがありますが、機器メンテナンスの観点から見れば危険極まりない誤情報です。
まず押さえるべきは、食洗機に重曹を使ってはいけない理由の力学的・化学的根拠です。重曹(炭酸水素ナトリウム)は水に非常に溶けにくく、常温の水100mlに対して約9.6gしか溶解しません。食洗機の循環水路内に入り込んだ重曹の粒子は、ヒーターの熱によって水分を奪われ、結晶化してコンクリートのように固着します。これにより、排水弁の開閉不良、水位電極への被膜形成による誤検知、そして微細な水噴射孔を塞ぐ原因になります。
次に、水垢落としの定番とされるクエン酸についても、食洗機クエン酸洗浄の注意点と真相を正しく把握しておく必要があります。クエン酸は酸性物質であり、アルカリ性のミネラル汚れ(炭酸カルシウム)を中和・溶解する力に優れています。しかし、油脂汚れ(酸性)を落とす力は皆無です。それどころか、油汚れが酷い状態でクエン酸を使用すると、庫内に浮遊した脂肪酸が固まり、ベタベタした被膜へと変質してしまいます。
さらに重大なリスクが「金属腐食」と「有毒ガス」です。濃度が高すぎるクエン酸液を長時間放置すると、ヒーター管のステンレス被膜を侵食し、ピンホールと呼ばれる微細な穴を開けて漏電火災のリスクを高めます。また、カビ取り用の塩素系洗浄剤の成分が庫内に微量でも残っていた場合、酸と反応して致死性の塩素ガスを発生させる危険性があるため、同時使用および連続使用は厳禁です。