牛の舌は約1.5キロから2キロほどの重量がある。しかし、そのすべてが同じ肉質を持っているわけではない。先端から根元に向かうにつれて運動量が減少し、柔らかさと脂の乗りが劇的に変化する特異な構造を持つ。その最深部、付け根のわずか10〜15パーセント程度しか存在しないプレミアムゾーンこそが「タン元」だ。
日本食肉格付協会が定める厳格な規格においても、黒毛和牛の肉質はサシの美しさや歩留まりで評価されるが、舌のような内臓肉(副生物)は枝肉の等級とは別枠で取引される。それゆえに、確かな目利きと職人のカッティング技術が肉の価値を大きく左右する。運動をほとんどしないタン元は筋繊維が極めて細かく、融点の低い上質な脂が網の目状に入り込む。まさに牛が蓄えた旨味の集大成と言える。