となりの山田くんが大爆死した3つの真相と作画革命の凄み

となりの山田くんが大爆死した3つの真相と作画革命の凄み

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興行的な評価とは正反対に、国内外のアニメーションクリエイターから「奇跡の到達点」と称賛され続けているのが、本作の映像表現です。一見するとシンプルな落書きのように見える描線ですが、その裏側には当時の映像技術の限界を突破する過酷な開発劇がありました。

高畑勲監督は「セル画独特の均一な輪郭線や塗りつぶされた色面ではなく、アニメーターの鉛筆描きの勢いや、水彩絵の具のにじみをそのままスクリーンに定着させたい」という長年の理想を掲げました。この要求を叶えるため、スタジオジブリは従来のセルアニメーション制作ラインを完全に停止させ、スタジオジブリ初の全編フルデジタル作画への転換を決断したのです。

しかし、1990年代末のデジタル技術は黎明期であり、鉛筆の強弱や水彩のテクスチャを再現するソフトウェアは存在しませんでした。スタッフは膨大な手描き原画をスキャンし、一本一本の描線のカスレや滲みをデジタル上で手作業で調整するという、気の遠くなるような作業を強いられました。その結果、作画枚数は約17万枚に達し、制作期間の長期化とともに予算は23億円を突破することになったのです。

この「余白をあえて描かないことで空間の広がりを感じさせる」アプローチは、後に高畑監督の遺作となる『かぐや姫の物語』(2013年)の描線表現へと直結しています。映画史の観点から見れば、『となりの山田くん』という巨大な実験場があったからこそ、日本アニメーションの描画技術は新たな次元へ到達できたといっても過言ではありません。

山口 彩花
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山口 彩花

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。