現場で確実に効果を出すためには、いくつかの厳格な「手技の極意」が存在する。力任せに擦るだけでは逆効果になりかねない。ベッドサイドで今日から実践できる基本原則を整理した。
第一の極意は「手のひらの全面密着と連続性」だ。指先だけで触れたり、撫でている途中で手を急に離したりしてはならない。施術者の手のひらの母指球から指の先までを相手の皮膚にピタリと吸い付かせ、常にどちらかの手が肌に触れ続けている状態を保つ。途切れない接触が、脳に絶対的な安心シグナルを送り続ける。
第二の極意は「呼吸に合わせた速度と微小な圧」である。相手の呼吸を観察し、吐く息に合わせてゆっくりと手を滑らせる。皮膚がわずか1ミリメートルほどたわむ程度の極めて柔らかい圧力が理想だ。摩擦を軽減するため、無香料または微香性の天然植物油(ホホバオイルやスイートアーモンドオイルなど)を手のひらで温めてから使用するのが鉄則となる。
部位別の使い分けも重要だ。激しい興奮やせん妄状態にある人には、まず拒否感の少ない「手(ハンドケア)」から始める。指先から前腕に向かって円を描くように撫で上げるだけで、こわばっていた指がすっと開く。背中を包み込む「バックケア」は、就寝前の不眠や夕暮れ時の強い不安(夕暮れ症候群)に対して劇的な鎮静効果を発揮する。下肢のむくみや冷えを伴う不穏には「フットケア」が最も適している。