フィッシュセラピーで使用される主たる魚種は、学名ガラ・ルファ(Garra rufa)と呼ばれるコイ科の淡水魚だ。中東原産のこの魚は、水温が高く餌が乏しい環境下で、他の動物の皮膚の死んだ細胞を突いて食べる特殊な生態を持つ。この習性が美容ピーリングとして利用されてきた。
しかし、生物を媒介とする以上、決定的な構造的欠陥が存在する。水プールや温浴施設の設備であれば塩素や殺菌剤で徹底的に水質を滅菌・消毒できるが、生きている魚の入った水槽に強力な化学殺菌剤を投入することはできない。魚が死んでしまうからだ。
皮膚科学研究者として国際的に知られるリチャード・ショルツ博士(皮膚科学研究者)は、この構造的ジレンマについて次のように警鐘を鳴らす。「生体であるガラ・ルファ自体を殺菌滅菌することは不可能だ。さらに、利用者が落とす角質や排泄物を栄養源として、水槽内ではアガラクチア菌(Streptococcus agalactiae)や非結核性抗酸菌(Mycobacterium marinum)、緑膿菌といった凶悪な病原体が爆発的に増殖する」