日本語の規範を守る辞書編纂の現場では、この漢字に対する厳格な姿勢が保持されている。岩波書店が刊行を重ねる日本最高峰の『広辞苑』をはじめ、各出版社が改訂を続ける主要な国語辞典を紐解くと、見出し語としての扱いは「えせ」に一元化されている。デジタル版辞書の検索システムにおいては、「にせ」と誤入力したユーザーに対して「もしかして:えせ」と修正を促すアルゴリズムが標準搭載されるようになった。
一部の俗語辞典やネット用語集では「誤読として『にせ』と読まれるケースが増加中」と注記される事例もあるが、言論界や教育の場で「にせ」が正当な読みとして公認されたわけではない。言葉の流動性を肯定する現代の言語学的なトレンドの中にあっても、「似非=えせ」という境界線は極めて明確に引かれている。