かつて太平洋北西部で発生する台風には、米軍による「メアリー」や「ジェーン」といった女性名(のちに男性名も追加)が付けられていた。しかし2000年、劇的な転換期が訪れる。アジア防災会議および世界気象機関(WMO)の台風委員会が、地域固有の文化と連帯を反映させた新しい命名システムを導入したのだ。
加盟するのは日本、中国、韓国、フィリピン、タイ、アメリカなど14の国と地域。各メンバーが10個ずつ候補を出し合い、合計140個の名前が並ぶ「台風名リスト」が作成された。台風が発生するたびに、このリストの順番に従って名前が割り当てられ、140個を使い切ると再び最初の名前に戻るローテーション方式が採られている。
提出される名前のバリエーションは驚くほど豊かなものだ。カンボジアが誇る伝説の鳥「クラバイン」、カンボジアやタイの果物、フィリピンの植物など、各国が自国の風土や美意識を投影した言葉を選び抜いている。