バセドウ病がアスリートにとって致命的とされる最大の理由は、「安静にしているだけで24時間フルマラソンを走っているような状態」に身体が追い込まれる点にあります。
甲状腺ホルモンは全身の基礎代謝を司る重要な物質ですが、自己抗体によって甲状腺が異常刺激されると、過剰なホルモンが血中に溢れ出します。その結果、以下のような過酷な身体反応が引き起こされます。
まず直面するのが、激しい動悸と頻脈(不整脈)です。座っているだけでも心拍数が1分間に100〜120回を超え、少し体を動かしただけで最大心拍数近くまで跳ね上がります。この状態で強度の高いトレーニングを行うと、心不全や運動誘発性の致死性不整脈を引き起こす極めて危険な状態に陥ります。
次にアスリートを苦しめるのが、急速な体重減少と急激な筋力低下です。食事から摂取したエネルギーを上回るペースで体内のタンパク質や脂肪が分解されるため、どれだけ食べても筋肉量が激減します。階段を上るだけで太ももに力が入らなくなる「甲状腺ミオパチー(筋疾患)」を併発し、昨日まで軽々とこなしていた基本動作すら不可能になるケースも珍しくありません。