19世紀半ば、アメリカの商業発展を裏で支えた伝説的な書体が存在する。書道家プラット・ロジャース・スペンサーが考案した「スペンサリアン体」だ。風に揺れる植物や小川の流れなど、大自然の造形美に着想を得たこの筆記体は、エレガントで流麗な曲線が最大の特徴であり、当時の公文書や名刺、企業のロゴに広く採用された。
スペンサリアン体は、ペン先の筆圧による太線のメリハリと幾何学的な美しさを融合させた手法で、アメリカにおけるペンマンシップの黄金期を築き上げた。今日においても、格調高い手書き英語を目指す愛好家にとって、彼の遺した美意識は不可欠なバイブルとなっている。