物語の主人公である原美鈴(はら みすず)は、地方の高校で古文を担当する女性教師です。地味な服装に身を包み、自らの女性性を徹底的に隠すようにして淡々と日常をやり過ごす彼女には、誰にも言えない凄惨な過去がありました。それは、学生時代からの親友・美奈子(映画版では恵美香)の婚約者であるエリート銀行員・早藤雅巳(はやふじ まさみ)から、長年にわたって性暴力を受け、肉体的・精神的な支配を受け続けているという事実です。
早藤は外面の良い完璧な好青年を装いながら、美鈴に対しては徹底した暴力と脅迫で自尊心を破壊し、「お前が誘った」「拒まなかったお前が悪い」と刷り込むガスライティング(心理的虐待)を繰り返していました。美鈴は親友を傷つけまいとする思いと、傷つけられた自分自身への絶望から、「自分さえ我慢すればいい」と自らに「白い嘘(悪意のない嘘、自己保身の諦め)」をつき、尊厳を麻痺させて生きていたのです。
そんな美鈴の凍りついた日常を揺るがしたのが、担当クラスの男子生徒・新妻祐希(にいづま ゆうき)との出会いでした。新妻は放課後の教室で、自らが年上の女性(早藤の妻となる美奈子)から理不尽な性的被害を受けたことを美鈴に告白します。同じ「不可逆な性暴力の被害者」としての痛みを共有した二人は、教師と生徒という境界線を越え、歪でありながらも切実な魂の共鳴を深めていくことになります。