ボートレース戸田が「荒れる水面」と呼ばれる最大の根拠は、その極めて特殊なコースレイアウトにあります。戸田舟コースは1964年東京五輪の漕艇競技会場として整備された人工水路(戸田漕艇場)の一角を利用しており、水面幅はわずか107mと全国24場で最も狭い設計となっています。
さらに決定的なのが「第1ターンマークの配置」です。ホーム側のスタンドと第1ターンマークの距離はわずか37mしかありません。スタンド側に大きくターンマークが振られているため、1コースの艇はスタート後に左斜め前へ大きく斜行しながらターンマークへ向かわざるを得ない構造になっています。この窮屈なコース取りが、イン艇の旋回半径を狭め、スピードを落としたターンを余儀なくさせるのです。
現場で戦う現役A1レーサーの手記やインタビューでも、「戸田の1コースは独特の圧迫感があり、ブイが目の前に迫ってくる恐怖と戦いながらレバーを落とさなければならない」と語られています。イン艇が失速した外側から、助走距離を十分にとったセンター勢(3号艇・4号艇)がスピードに乗った全速まくりを浴びせる——これが戸田競艇場で日常的に繰り広げられる波乱劇のメカニズムです。
水質は荒川の水を取り込んだ「完全な淡水」であり、海水と比べて浮力が働きにくいため、選手の体重差やエンジンの基礎パワーが艇の推進力に直結します。硬い水面ゆえにターン時に舟がバウンドしやすく、旋回技術の巧拙が順位に直結する点も、レース展開を予測不能にする要因の一つです。