「歩けるから問題なし、と機械に判断されてしまいました。でも、自宅の冷蔵庫を開けると、何週間も前に賞味期限が切れた惣菜が腐っているんです」
そう語るのは、都内のケアマネジャー、佐藤美由紀さん(仮名・48歳)だ。担当する男性は、身体機能だけで見れば「ランクJ(生活自立)」に近いとAIに判定された。しかし、実際には軽度の認知症が進行しており、自力で買い出しに行っても同じものばかりを買ってきてしまう。ゴミ出しのルールも理解できず、近隣とのトラブルが絶えない。
AIは歩行速度や関節の可動域といった「数値化しやすいデータ」を重視する。その結果、精神的な衰えや社会的な孤立といった「見えないリスク」が削ぎ落とされているのだ。現場が直面しているのは、データ上は「自立」していながら、現実には「崩壊」寸前の生活を送る高齢者の姿である。