皮膚についてカピカピに乾いてしまった絵の具は、衣服とは異なるアプローチが求められます。焦って爪で無理に削り取ろうとすると表皮を傷つけ、除光液を皮膚に直接塗布すると脱脂作用によって激しい手荒れや接触皮膚炎を引き起こします。
アクリル絵の具の手の汚れを落とす方法として最も肌に優しいのは、皮膚の代謝と油分を利用する手法です。まず40℃前後のぬるま湯に数分間手を浸して皮膚の角質をふやけさせます。その後、オリーブオイルやメイク用のクレンジングオイルを塗り込み、そこに微量の重曹を加えて優しく揉み洗いします。オイルがアクリル樹脂と皮膚の接着面に入り込み、重曹の細かい粒子がマイルドな研磨剤の役割を果たすため、肌を痛めることなくポロポロと剥がれ落ちます。
一方、丸洗いができないカーペットに付着した場合は、スピードと慎重さのバランスが試されます。繊維の毛足を掻き分け、まずは表面で固まっている絵の具の塊をバターナイフやスプーンの背を使って削り落とします。その後、布に消毒用エタノールを染み込ませ、上から体重をかけて押し当て、繊維の奥から絵の具を布側へ転写させる作業を根気よく繰り返します。スチームアイロンなどの高温蒸気を当てる行為は、樹脂の架橋結合をさらに促進させて完全に定着してしまうため厳禁です。
また、作業道具であるパレットの洗い方にもコツがあります。ポリプロピレンなどの柔軟性があるプラスチック製パレットの場合、中途半端に濡れた状態で洗うよりも、完全に乾燥させてからパレットを軽くしならせることで、プラスチックフィルムのようにペリペリと綺麗に剥がせるケースが多々あります。もし固着して剥がれない場合は、画材店で入手できる専用リムーバーやクリーナーをティッシュに含ませて湿布のように数分パックすれば、新品同様の滑らかさを取り戻せます。