沢村栄純のキャリアを語る上で避けて通れないのが、1年夏の決勝(稲城実業戦)で打者・原田雅功の頭部付近へ死球を与えたことで発症した「イップス」です。インコースへの強気な攻めこそが生命線だった沢村にとって、右打者の内角へ腕を振って投げられなくなる症状は、投手生命の危機そのものでした。
この絶望的な状況を救ったのが、沢村が心から敬愛するクリス先輩(滝川・クリス・優)の存在です。クリスは沢村を決して見放さず、内角が投げられないなら「外角低めへの制球」を徹底的に磨くという逆転の発想を授けました。外角の出し入れという新たな投球の軸を獲得したことで、沢村の制球力と投球術は飛躍的な進化を遂げます。
さらに、秋の大会・薬師高校戦や王谷高校戦を経て、自らの力で再びインコースを突く勇気を取り戻し、イップスを完全克服。弱点を克服しただけでなく、投球の幅を大きく広げたこの経験こそが、後の「大エース・沢村栄純」を形作る強固な土台となりました。