直列多気筒エンジンが主流だった時代において、VTのVツイン構造は異質であり、同時に唯一無二の個性を生み出した。4気筒の名車として名高いホンダ・CBR400Fなどが「フォン!」という甲高い連続音を奏でるのに対し、VT250Fのエキゾーストノートは「ババババッ」という歯切れの良い鼓動感と、高回転域へ駆け上がるときのエッジの効いた咆哮が混ざり合う独特のものだった。
このサウンド特性は、集団走行時の音の厚みを増すだけでなく、マフラー音でテンポ良くリズムを刻むアクセルワークの技術においても独特のグルーヴ感をもたらした。フロント16インチホイールやインボード・ディスクブレーキという当時の最新技術が、ストリートの現場では鋭いハンドリング性能を生み出し、狭い路地での高い機動性を発揮したのも実に興味深い。