2018年5月、8度目のエベレスト挑戦中に命を落とした栗城氏。彼が最後に臨んだ過酷なデスゾーンで何が起きていたのか。死後、ジャーナリストや映像制作陣の手によってその足跡が辿られ、数々の山岳ノンフィクションやドキュメンタリー作品が制作された。
なかでも、ノンフィクション賞を受賞し大きな反響を呼んだ河野啓氏による著書『デスゾーン 栗城史多の真実』は、彼の生前の密着取材や遺品の手帳、関係者の証言を丹念に紡ぎ出し、世間が作り上げた「挑戦者」という虚像の裏に潜む、生の苦悩と弱さを白日のもとに晒した。山に挑み続けた理由は純粋な冒険心だけではなく、賞賛への依存と挫折への恐怖が複雑に絡み合った結果であったことが浮き彫りになっている。