多くの読者に強烈なトラウマと衝撃を与えたのは、「誰が、何のために丑嶋を刺したのか」という点です。巨大な暴力団組織でも、凄腕のヒットマンでもなく、犯人は過去のエピソードに登場したしがない元債務者の男でした。
この男は、丑嶋から過酷な取り立てを受け、すべてを失ってホームレスにまで転落した社会的弱者の象徴です。男は丑嶋に対して深い恨みを抱き続け、偶然街で見かけた丑嶋の後をつけ、無言のまま凶行に及びました。大掛かりな復讐計画ではなく、路上の行きずりのような突発的な暴力によって、絶対的強者だった丑嶋の命は奪われたのです。
作者の真鍋昌平氏は、単行本完結時の各種メディアインタビューにおいて、この結末について極めて明確な創作意図を明かしています。真鍋氏は「闇金という他人の人生を破壊して金を奪う悪党が、幸せな逃亡生活を送るようなハッピーエンドは絶対にあり得ない」と語っており、ピカレスク・ロマンとしての倫理的清算を課したことを強調しています。
どんなに強大な権力や暴力を知略で退けようとも、自らが過去に撒き散らした小さな悪意と絶望の連鎖からは逃れられない。この冷酷な因果応報こそが、丑嶋が刺された決定的な理由です。