伝統芸能界において、型を守る「守破離」のプロセスは極めて厳格だ。しかし、彼は型の内部にとどまることを良しとしない。オペラや現代劇とのコラボレーション、先端デジタルアートとの融合など、従来の歌舞伎ファンを驚かせるアプローチを次々と繰り出してきた。それは奇をてらった演出ではなく、歌舞伎が誕生した初期のエネルギー、すなわち「傾く(かぶく)」精神の現代的な復権に他ならない。
観客が何を求めているのかを冷徹なまでに分析し、それを圧倒的なエンターテインメントへと昇華させる。その客席との対話力こそが、劇場の動員を支える最大の武器だ。古典の深遠な美しさを失うことなく、初見の観客をも惹きつける巧みな仕掛けは、常に業界関係者を唸らせている。