日本国内で人間に害を及ぼす主な種はツキノワグマとヒグマの2種類だ。外傷外科学の視点から受傷パターンを分析すると、この両者の身体的特徴と攻撃様式の違いがはっきりと浮き彫りになる。本州や四国に広く生息するツキノワグマは、体格こそ比較的小ぶりだが、突発的に顔面や頭部を爪で引っかく「一撃離脱」型の攻撃が多い。このため、顔面骨折や組織の皮膚剥離、眼球損傷などが顕著に見られる。
一方で北海道に生息するヒグマは圧倒的な巨体と筋力を誇り、人間を「獲物」や「排除対象」として執拗に押さえつける。噛み付きによる圧砕創や広範囲の軟部組織損傷、さらには長管骨の粉砕骨折など、全身に渡る破滅的な損害をもたらすケースが極めて多い。外科医が直面する治療の難易度も、爪による切創中心か、力任せの圧砕創かによって大きく異なってくる。