近年のフィギュアスケートにおいて、多くのファンが「なぜ4回転を何本も跳んだ選手が、3回転中心の選手に敗れることがあるのか」という採点上の疑問を抱きます。その背景には、2018年平昌五輪以降に導入されたGOE(出来ばえ点)±5点システムと、ジャンプの質・回転不足に対する厳格な判定基準があります。
ジャンプの最終得点は「基礎点 + GOE」で算出されますが、GOEで満点の+5を獲得すると、基礎点の約50%ものボーナスポイントが加算されます。例えば、4回転トウループ(基礎点9.50)で質の高い跳躍を見せて+5を獲得すれば14.25点に跳ね上がりますが、無理に着氷してステップアウトや転倒を喫し-5の評価を受けると、基礎点が半分近く削られた上に転倒減点(-1.00)が科され、実質4〜5点程度まで暴落します。これは美しい3回転ルッツ(基礎点5.90+GOE加算で約8点)をクリーンに決めた方が遥かに高得点になることを意味します。
さらに審判団(テクニカルパネル)は、スーパースローカメラを用いて以下の回転不足・エッジ判定を厳密にジャッジします。
- qマーク(クォーター):回転不足がちょうど1/4(90度)以内の場合。基礎点は100%維持されるが、GOEで減点対象となる。
- < マーク(アンダーローテーション / UR):回転不足が1/4を超え1/2(180度)未満の場合。基礎点が本来の80%に減額され、GOEも大幅にマイナスされる。
- << マーク(ダウングレード / DG):回転不足が1/2以上の場合。ジャンプの回転数が1段階引き下げられ(4回転なら3回転の基礎点に)、さらに厳しい減点を受ける。
- エッジエラー(e記号)とアテンション(!記号):フリップやルッツで踏み切りの刃が正しくない場合、「!(軽微なエラー)」でGOE減点、「e(明らかな踏み間違い)」で基礎点減額(80%)と大幅減点が科される。
ただ大技を跳ぶだけでなく、「高さ」「幅」「空中姿勢の美しさ」「ステップからの即座の踏み切り」「流れるような着氷姿勢」を全て満たして初めて、現代の採点システムで頂点に立つことができるのです。