東京・渋谷の路地裏。雑居ビルの地下へと続く階段に、若者の長い列ができている。目当ては「暗闇読書カフェ」だ。照明を極限まで落とした静寂の空間で、手元の小さなブックライトだけを頼りにホラー本を開く。週末の予約枠は数分で埋まるという。
「スマホを置いて、本の中の恐怖に没頭する。この数時間だけはSNSの通知も忘れられる」と、毎週通う20代の会社員は語る。効率やタイパばかりが叫ばれる時代に、あえて時間をかけて1冊の本に向き合い、身の毛もよだつ恐怖を味わう。一見矛盾しているようなこの行動こそ、現代人が飢え渇いた本能的な刺激への欲求なのかもしれない。