知識の潮流を客観的に把握するために、学術データベースや市場の動きを見てみよう。論文検索エンジンであるGoogle Scholarで「自己 対義語」「自己 他者 認識」といったキーワードを分析すると、近年は脳科学や人工知能(AI)との交差点での研究が急増していることがわかる。
AIが高度な会話能力を獲得し、人間のような思考を模倣し始めた現代、人間固有の「自己」とは何かを再定義する論文が相次いで発表されているのだ。研究者たちは、AIを「非人間的な他者」と位置づけ、その対比から人間の意識の特殊性を解明しようと試みている。
同時に出版業界でも、「自己理解」「他者理解」をテーマにしたビジネス書や人文書が空前の売れ行きを見せている。自己啓発ブームが一巡し、多様性の時代において「自分と異なる存在(他者)」とどのように折り合いをつけて生きるかという、実践的な問いへの関心が高まっている結果と言えるだろう。