騒動が表面化した当時、日本国内では新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、すでにマスクの深刻な品薄状態が続いていました。人々の不安と緊張が極限まで高まっていたタイミングで投じられたのが、「マスクとトイレットペーパーは同じ原材料で作られており、中国からの輸入が止まるため次は紙類がなくなる」という誤った情報です。
この言説は、一見すると「マスクが消えた」という現実の体験と結びついていたため、多くの人々にとって妙な説得力を持って受け止められてしまいました。不安に怯える心理状態では、真偽を確かめる理性よりも「万が一本当だったら生活が破綻する」という危機感が先行し、確証のない情報があたかも事実であるかのようにタイムライン上を席巻していったのです。
事態を重く見た日本家庭紙工業会は即座に公式発表を行い、「トイレットペーパーの原料は古紙パルプが中心であり、マスク(不織布)とは全く異なる」「国内で消費される製品のほとんどは国内工場で製造されており、在庫も十分に確保されている」と繰り返し呼びかけました。しかし、一度火がついた人々の猜疑心を沈静化させるには、あまりにもデマの拡散スピードが速すぎました。