王道家を語る上で避けて通れないのが、創業者である清水裕正(しみず ひろまさ)氏の波乱に満ちた経歴と、家系の総本山「吉村家」からの直系離脱劇です。清水氏は吉村家の門を叩き、創業者・吉村実氏の厳しい指導のもとで修行を重ねました。2003年、千葉県柏市に「吉村家直系店 王道家」をオープンすると、瞬く間に東葛エリア屈指の超行列店へと押し上げます。
当時、吉村家直系店を名乗るためには絶対的な条件が存在していました。その最たるものが、吉村家直系および特定の有力店にのみ供給される「酒井製麺」の特注麺を使用することです。しかし、清水氏は自らが理想とする「重厚な濃厚スープを極限まで引き立てる麺」を追い求める中で、既製の麺スペックに限界を感じるようになりました。当時のインタビューや関係者の証言によると、清水氏は「もっと小麦の香りが立ち、スープの吸い込みと噛みごたえを両立した麺を作りたい」という強烈な職人魂を抱いていたとされます。
2011年、清水氏は周囲の反対を押し切る形で自家製麺の自社開発に着手。これは吉村家の規律において明確な契約違反となり、事実上の「直系離脱(破門)」を意味する決断でした。看板を下ろすリスクを背負いながらも誕生したのが、現在の「王道家自家製麺」です。複数の厳選小麦を独自比率でブレンドし、加水率を絶妙にコントロールした短尺の平打ち太麺は、モチモチとした食感と小麦本来の甘みを放ち、直系時代を超えるスープとの一体感を実現しました。自らの信念を貫き通したこの決別こそが、王道家が真のオリジナリティを獲得した歴史的転換点となったのです。