「日本は先進国から落ちた」という言説の真偽を確かめるには、そもそも先進国の定義が国際機関でどう位置づけられているかを整理する必要があります。実は、国際社会において単一の厳格な「先進国の法的定義」が存在するわけではありません。一般的には、IMFによる「高度経済国(Advanced Economies)」、国連開発計画(UNDP)の「人間開発指数(HDI)」、そしてOECD加盟国(先進国クラブ)の枠組みが基準とされます。
日本が先進国入りを果たした時期は、1964年の東京オリンピック開催およびアジア初のOECD加盟時というのが通説です。最新のIMF分類やUNDPの人間開発報告書においても、日本は一貫して「最上位の先進国グループ」に位置づけられています。乳児死亡率の低さ、平均寿命の長さ、治安の良さ、基礎インフラの完成度において、日本は依然として世界トップクラスの水準を維持しています。
それにもかかわらず「途上国転落」の言説が広まるのは、経済の動態的な指標(成長率・賃金・一人当たり生産性)において、他の先進諸国との格差が急速に拡大している現実に起因しています。制度や治安といった「ストック(蓄積)」は先進国でありながら、成長力や所得水準という「フロー(稼ぐ力)」が劣後している二重構造が、転落論の本質です。