続く第二段階が「中成り(ちゅうなり)」だ。ここに至ると、額の角ははっきりと伸び、髪は乱れ、眉間には深い皺が刻まれる。人間としての理性のタガが外れ、完全に怨霊としての姿が現れ始める段階である。
この中成りの美学が遺憾なく発揮される代表的な能演目『葵上』では、光源氏の愛を失った六条御息所の怨念が生霊となって病床の葵上を襲う。面の上半分には耐えがたい悲しみの影が陰鬱に残りつつも、下半分は激しい怒りに歪む。この上下の表情の対比こそが、中成り最大の魅力であり恐怖の源泉だ。祈祷によって追い詰められ、嫉妬の炎に身を焦がしながら狂気へと没入していく姿は、観客の呼吸を止めるほどの迫力を放つ。