吉野家の牛丼が他のチェーン店やすき焼きと決定的に異なるのは、「淡麗でありながら奥深いコク」と「何杯でも食べ飽きない軽やかな後味」の両立にあります。一般的な家庭の牛丼レシピは、醤油と砂糖、みりんを同量近く配合した濃厚な甘辛味になりがちですが、吉野家のタレは甘みを極力抑え、塩味と旨味、そしてほのかな酸味のバランスで成立しています。
吉野家で使用されている牛肉は、赤身と脂身の比率が約6対4とされる北米産牛バラ肉(ショートプレート)です。この脂の融点は低く、タレの中で煮出されることで良質な牛脂がつゆ全体に乳化し、濃厚なコクへ変化します。つまり、吉野家のつゆは「調味料だけで完成している」のではなく、牛肉から溶け出した脂とタレが鍋の中で一体化して初めて完成する設計になっているのです。