刺青囚人の多くは杉元佐一や土方歳三一派との死闘、あるいは鶴見中尉率いる第七師団による銃撃によって命を落とします。しかし、姉畑支遁の最期は『ゴールデンカムイ』全編を通しても唯一無二の、あまりにも壮絶かつ自滅的なものでした。
姉畑は自らの動物記の集大成として、エゾシカやウサギ、エゾオオカミといったあらゆる北方動物との合一を試みた末、最終標的として「森の王者」である巨大な雌のヒグマを選びます。発情期のヒグマをおびき寄せるため、杉元一行の谷垣源次郎を囮にするなどの暴挙に出た姉畑は、ついに山中で巨大なヒグマと対峙します。
通常であれば一撃で人間を撲殺する凶暴なヒグマに対し、姉畑は恐怖を一切見せず、狂気的な愛の執念でヒグマの背後へと回り込みます。激しい暴風雨と泥まみれの格闘の末、姉畑はヒグマとのウコチャヌプコロを強行。そして次の瞬間、彼は熊の体にしがみついたまま静かに動かなくなりました。
姉畑支遁の直接の死因は「腹上死(極度の興奮・疲労・絶頂による急性心不全・ショック死)」です。ヒグマに引き裂かれて死んだのではなく、己の欲望の極致に達した瞬間に、恍惚の表情を浮かべたまま力尽きて死亡したのです。現場に駆けつけた杉元佐一やアシㇼパが、息絶えた姉畑の亡骸と困惑するヒグマを目の当たりにして絶句するシーンは、ギャグとサスペンスと哀愁が入り乱れた名場面として読者の脳裏に焼き付いています。