けいちゃんの名が一躍全国区となった象徴的な場所、それが都庁ピアノだ。開放的な広場に置かれた一台のピアノに向かい、彼が鍵盤に手を置いた瞬間、その場の雰囲気が目に見えて変わった。硬質な打鍵音と滑らかなアルペジオが交錯し、周囲を取り囲むギャラリーから息をのむ気配が漂う。
彼が提示したのは、単に楽譜を正確に再現するだけの演奏ではない。その場の空気、観客の視線、都市のノイズさえも味方につける圧倒的なライブ感だ。ストリートピアノという言葉がまだ一部の音楽好きの間でしか語られていなかった頃から、彼はその最前線で鍵盤を叩き続けてきた。路上で培われた度胸と即興性は、従来のクラシック演奏家にはない独自のオーラを彼に与えている。